2026年10月20日
口唇ヘルペスは、唇やその周囲に軽い痛みを伴う水ぶくれができるウイルス性の感染症です。一度ウイルスに感染すると体内に潜伏し続けるため、ふとしたきっかけで再発を繰り返すのが特徴です。
適切な治療や日頃のケアを知っておくことで、症状の重症化を防ぎ、治るまでの期間を短くすることができます。
口唇ヘルペスの症状と原因
口唇ヘルペスは、初めて感染した時(初感染)と、再び症状が出る時(再発)で現れ方に違いがあります。
初感染時: 多くの場合は軽度か無症状ですが、小児が感染するとまれに重症化することがあります。
再発時の症状: 唇やその周りに痛みを伴う小さな水ぶくれが数個でき、1〜2日後に膿やかさぶたになって8〜10日以内に治るという経過をたどります。
発症のサイン(前兆): 水ぶくれができる1日ほど前に、唇やその周りにピリピリ・ムズムズする違和感や、チクチクとした痛み、かゆみがあらわれます。前兆がわからない方もいらっしゃいます。

原因と再発のきっかけ
原因となるのは単純ヘルペスウイルス(HSV1型)で、成人の約45%が感染しているとされています。ウイルスは一度体内に入ると神経節に一生涯潜伏し続け、免疫力が低下したときに再び活性化します。 主な再発のきっかけは、多忙、寝不足、ストレス、風邪、季節の変わり目のほか、紫外線や月経などがあります。また、患部や唾液に触れることで周囲の人(特に赤ちゃんなど)へ感染させるリスクがあるため注意が必要です。
早く治すための治療のポイント
口唇ヘルペスの治療は、飲み薬が一般的です。抗ヘルペスウイルス薬は、すでに増えてしまったウイルスの数を減らすのではなく、「ウイルスが増えるのを抑える」働きをします。
唇の「チクチク・ピリピリ」という違和感が出てきた段階ですでにウイルスは増え始めているため、この前兆の段階でいかに早く薬を内服するかが重要となります。
水ぶくれが出る前に自分で飲む新しい治療法「PIT」
従来の治療では、症状が出てから受診するためタイムラグが生じていましたが、近年は新しい治療の選択肢としてPIT(Patient Initiated Therapy:患者自己投与療法)が広がっています。
PITの仕組み: あらかじめ医師から飲み薬を処方してもらい、手元に常備しておきます。再発の前兆(ピリピリ・チクチクなどの違和感)に気づいてからできるだけ早く(通常6時間以内)、患者さん自身の判断で内服をします。
対象となる方: 同じ部位のヘルペスを年3回以上繰り返していること、初期症状を自分で正確に判断できること、過去に医師から口唇ヘルペスと診断されたことがあることなどが目安となります。
注意点: PITで手元に置いておけるのは基本的に次回の再発1回分です。使用した際は、次の再発に備えて改めて医療機関を受診する必要があります。
※なお、水ぶくれができてしまった後の治療については、なるべく早く受診して抗ヘルペスウイルス薬(飲み薬または塗り薬)による治療を行います。飲み薬は、症状が治まったように見えても自己判断で中断せず、原則最後まで飲み切りましょう。

日常生活での注意点と再発予防
患部のケア: 患部は石けんや洗顔料をよく泡立ててやさしく洗い、触れた後は必ず手を洗いましょう。傷痕が残るリスクを避けるため、かさぶたは無理に取らないようにします。
感染対策: タオルやコップの共用は避け、重い症状を引き起こすおそれがある赤ちゃんとの接触には十分に注意してください。
生活習慣: 栄養バランスの取れた食事、十分な睡眠、疲れやストレスを溜めないことが大切です。
何度も繰り返す口唇ヘルペスは、心身の疲れやストレスを知らせてくれるサインの一つでもあります。十分な休息と早めの治療で、上手にコントロールしていきましょう。「もしかしてヘルペスかも」という違和感や、予防法について気になることがありましたら、いつでも当院にご相談ください。
参照
⽪膚科学に特化した製薬企業マルホヘルペス治療の総合情報サイトhttps://www.maruho.co.jp/kanja/herpes/
川島眞(監修). 『やさしく学べる必須皮膚疾患 改訂3版』, メディカルレビュー社出版, 2025, p.32-33. p.130.
川島眞(監修).『口唇ヘルペスはこんな病気です』マルホ株式会社